2016年3月15日火曜日

15 Choices about Tent/Tarp on CDT(2015) EN


Apache     Handmade SilNyron Tarp(Shaped)
Mehap      Yama Mountain Gear Cirriform single wall tarp
Nomnom   Mountain Laurel Designs Grace Tarp Solo+Serenity Bug Shelter
Grim         Zpacks Hexamid Solo
Guy On a Buffalo  Rayway Tarp+Bathtab(with Bugnet)
Scout       Zpacks Hexamid Duo
Flamingo   Handmade Tarp(Duplex Style)
Whistle      Sea To Summit UltraSil Tarpponcho and Bivysack
Crosby      Tarptent ProTrail
PaPi Chulo    Big Agnes Copper Spur UL2
ED             Big Agnes Copper Spur UL1
Darkness    Big Agnes Fly Creek UL2
Veggie        Big Agnes Fly CreekUL1
Axyl          REI Passage 1 Tent 
Wonderer   Big Agnes Slater UL1+(Cold)/Zpacks Cuben Tarp(Warm)



Whistle was the only Sobo I saw who used TarpPoncho .
Wonderer(Cold Situation)

Wonderer(Warm Situation)
 

2016年3月6日日曜日

アメリカ・ロングトレイルにおけるヒッチハイクの必要性と妥当性


長くなるので、まずはざっくりまとめ。
1、ハイカーは必要に応じ、ヒッチハイクをする。
2、アメリカのほとんどの州で、ヒッチハイクは法律により禁止されている。
3、現代のアメリカには、ヒッチハイクは危険な行為という共通認識が社会全体にある。
4、有名なロングトレイルや国立公園の周辺は、ドライバーがハイカーのニーズを理解しているから乗せてくれるという特殊なエリア。
5、路肩の未舗装部分や駐車場など、ぎりぎり道路ではない場所に立てば法律的にセーフと考えられている。

道路の外に立ちヒッチ。右側通行なので、自分の目的地は画面の右方向。

人間というのは恐ろしいもので、聞いた言葉をアタマの中で書き換えできるようだ。
自分が「ハイク」と言っても 、「ヒッチハイク」にしか聞こえないことがあるらしい。少なくとも知人の何人かは、自分がアメリカをヒッチハイクして回っていると思い込んでしまっている。もちろん、ハイクというのは野外を歩いたりキャンプしたりまた歩いたりという行為で、通りすがりの車に乗せてもらって移動するヒッチハイクとは全く別である。

それだけならまあ害のない勘違いだが、問題は彼らに「アメリカ!ヒッチハイク!!」という先入観があることだ。 そっちに思考が引きずられてしまうのである。実際、何度か困ったことがある。
こちらの話を聞いて「やっぱアメリカって、『ヒッチハイクできる』んですね。『していい』んですね!ああヒッチハイク、いいなあヒッチハイク!!」と目を輝かせるヒトビトが存在するのだ。彼らは『ハイカーが山を歩いていて、必要に応じてヒッチハイクで街に降りる』という説明の、一部分にだけ全力でフォーカスする。そして、アメリカとはそういうものだと思い込む。正確に言うと、彼らはこれまでの人生で聞いたヒッチハイクなんて危ないからダメだとか、法律で禁止だという話に納得できず、言い訳を探しているだけなのだ。
この、ヒッチハイクへの極度の憧れ(または思い込み)は非常に強いらしく、実はリアルなハイカーもよく分からないままコーフンしてやってしまっていたりする。自分はちょいちょい問題点を指摘しているのだが、通じない。この際ちょっと説明したい。だらだらと書いてしまうがお許しいただきたい。

まず、かつてアメリカにおいて、ヒッチハイクが盛んだった時代があったのは間違いない。そして、ヒッチハイカーがドライバーを襲ったり、逆にドライバーがヒッチハイカーを脅してカネを巻き上げたりという犯罪が社会的に問題視されるようになり、ほとんどの州がヒッチハイクを法律で禁止するに至った。

http://www.hitchhiker.50megs.com/custom.html
このサイトはアメリカ各州法の、ヒッチハイクに関する条項をまとめている。個人のサイトだが、いくつかの州について調べてみたところ、まず正確に拾えているようだ。「ほとんどの州で禁止」なのがよくわかる。ただし、情報は最新ではない。
https://www.law.cornell.edu/cfr/text/36/4.31
こちらはコーネル大学ロースクールが運用する法律検索システムで 、CFR(Code of Federal Regulations=米国連邦規則集)のヒッチハイクに関する条項を示したページ。アメリカは国として、特別なエリア以外はヒッチハイクを禁止していることが読み取れる。アメリカは州ごとに独自の法律を持つが、国立公園(National Park)や国有林(National Forest)の区域内では、州法より連邦法が優先される。

これらの法制定は啓蒙というか、一般のヒッチハイクに対するイメージへの影響も大きかった。「犯罪の温床だから禁止されたんだよね」と多くの人が思ったわけだ。だから現在、ヒッチハイクはする側にもされる側にも警戒感がある。自分はヒッチハイクに成功して「実は、ちょっと怖かったんだよね。危ないって言うじゃない?」と言われたことが何度もある。

しかし、そこで問題が生じる。ヒッチハイクはすでに文化として根付いていたし、事情によりどうしてもやらねばならぬケースもある。その一つが、ロングトレイルを歩くハイカーだ。ハイカーは車社会のアメリカにあって歩いて移動し、出発点とは別の街に降りるという特殊な人種なのである。
社会全体としては「山の中で車が壊れたらヒッチするだろ」とかいう心情のほうがクローズアップされたかもしれないが、とにかくアメリカ人たちは現実と法規制の妥協点をなんとか見出そうとした。その結果生まれたのが「交通に関する法律で禁止されているんだから、道路じゃなきゃ違法じゃない」という考え方である。

http://www.bestattorney.com/california-motor-vehicle-code/hitchhiking-21957.html
これはかつて知恵袋サイトで紹介されていた、カリフォルニアにある弁護士事務所のサイト。これによると、道路の外はヒッチが可能で、歩道やハイウエイのレストエリアでも構わないとなっている。歩道に関しては「車が道路に停まらない限り」とある。これは「道路上で車の急停止は危険行為。追突などを招く」という交通全般に通じる法解釈があるからだそうで、逆に言えば歩道で親指を立てた場合、車が道路(走路)上に停止してしまったら、ヒッチハイカーもドライバーも共に罪に問われる可能性があるということだ。
このあたりの法解釈に関しては、ネット上に様々な意見があふれているので、興味のある方はそれぞれ検証していただきたい。個人的には法律関係者が、条件付きにしても「歩道でもOK」と言い切っているのは珍しいと思う。実践する側としては、目の前の警官が弁護士と同じ解釈をするとは限らない、という問題がある。

ここまで来てようやく具体的な話になる。有名なロングトレイルや国立公園には、ハイカーがたくさん訪れる。知らない方のために書いておくと、ハイクはほとんどの国立公園で認められる数少ないアウトドアアクティビティであり、公園内はトレイルだらけだ。というわけで、その周辺住民たちは「ハイカーは数日に一度街に降りて食料の補給、入浴、洗濯などを行う」「だから犯罪ではなく、街とトレイルの行き来が目的」という理解がある。アメリカ社会が持つ「ヒッチハイク=犯罪に巻き込まれる危険性」という認識が、ハイカー相手に限って外れるのがこれらの地域だ。つまり、自然から離れた都市部で親指を立てても、通りすがりの車が停まってくれる可能性は非常に低い。メジャーなロングトレイルの近くでは、むしろヒッチハイクは非常に簡単で、自分は「最初の一台」をヒッチできたことも少なくない。キリスト教社会でもあるアメリカでは、困っている人を助けてやろうという意識がしばしば働くらしい。危険さえなければみんな優しいのだ。
自分はロングトレイルを歩いて、キャンプして、また歩く「ハイカー」。本来「ヒッチハイカー」ではありません。
住民に理解があれば、警官にもハイカーに対する理解がある。だから、ヒッチハイクにはかなり法的にグレーな部分があるが、ハイカーはそういうエリアではよほどの危険行為をしない限り逮捕されないようだ。自分は少々目が悪く、ハイク中はメガネをかけていないので、カリフォルニアでは何度もC.H.P.(カリフォルニアハイウエイパトロール)のパトカーに向かって親指を立ててしまった。一度などはパトカーが停まって、降りてきた警官が「ちゃんと道路の外に立っているか?よし、その路肩(shoulder)はOKだ。道路に出るなよ!」と注意してくれた。これはPCTの近くというのが利いている。全米どこに行っても同じことをして、逮捕なり職務質問なりされないとは限らない。ATを歩いていたときなどは、保安官がパトカーで送ってくれたことすらある。ハイカーは、そしてロングトレイル周辺は特別なのだ。

ここでちょっと、ロングトレイルを歩くハイカー限定のマニアックな話。PCTには「オレゴン州ではヒッチハイクが合法だ」と言い切るハイカーが少なくない。しかし、上記のサイトなどを通じて調べれば分かるが、オレゴンでもヒッチハイクは違法である。なぜこんな勘違いが起こるかというと、PCTで最も読まれていると言われるガイドブック(Yogi's PCT Guidebook※)が「オレゴンにあるクレーター・レイク国立公園は、独自ルールでヒッチハイクを認めていない」と書いてきたからだ。ここから「その国立公園の外なら合法なんだな」という誤解が生まれる。正確には、オレゴンも他のほとんどの州と同じく「道路でのヒッチハイクは違法だが、道路の外に立てばセーフと考えられる」なのだが、クレーター・レイク国立公園ではそれを認めず「道路だろうと路肩だろうと駐車場内であろうとヒッチハイクは禁止」としていることになる。実際、公園内でヒッチハイクを試みたPCTハイカーがレンジャーによって逮捕され、罰金を課されたケースが報告されている。
またワイオミング州は、2013年にヒッチハイクを合法化する法案が通ったという珍しい州だが、ほとんどのCDTハイカーが補給に降りるデュボイズ(Dubois)という町では条例でヒッチハイクが禁止(道路の外でも)と言われている。2015年の時点ですでに逮捕者も出ているとのウワサだったので、自分を含めハイカーたちは街からトレイルに戻る時、ひーひー言いながら1時間ほど道路を歩き、Town Duboisという「ここからデュボイズ」の道路標識を越えたところまで出てヒッチせざるをえなかった。つくづく場所により事情は違うと思う。ロングトレイルを歩くことは、様々な行政区をまたいで移動するということでもある。ハイカーだから許されるに決まってる、と思い込んではいけない。
(※→YogiのPCTガイドブックは、かつてはハイクのノウハウを解説したHandbookと、タウンガイドやトレイル情報を載せたGuidebookの2冊が発行されていたが、現在はこの二つを合わせた合本版が「Yogi's PCT Handbook」として発行されている)

最後に、ヒッチハイクを受け入れてくれる地域においてという前提で、細かいテクニックを解説。まずバックパックやトレッキングポールを見えるようにすることで、こちらはハイカーだとアピールする。そうしないと誰も安心して乗せてくれない。次に道路の外、つまり法律的にセーフな場所を探す。田舎町では、実に頻繁にパトカーが走り回っている。道路の上で親指を立てていると、たとえ見た目がハイカーでも見逃してくれるとは限らない。そして、危険の元となる場所は避ける。交差点の近くに立つとドライバーのよそ見を引き起こすし、カーブの直後などは停まってくれた車に後続が追突しかねない。
それから、車が停まりやすい場所を確保する。山から街に降りたいとき坂道でヒッチに立つことがあるが、上り坂の途中で車を捕まえるのは難しい。ほとんどのドライバーは、勢いをつけて一気に坂を登りきってしまいたいからだ。下り坂でも、スピードが出すぎるところは「うっかり停まると追突される」という意識がドライバーにあるそうで、これもなかなか難しい。だから道路のレーン横に立つ場合はある程度フラットな場所で、ドライバーが「あそこに人が立っているな」と早めに分かるくらいの見通しが必要だ。路肩に車を寄せられる平らなスペースがあるのが理想。駐車場があるなら、道路への出口付近に立つのも有効だ。駐車場から出ようとする車がゆっくり移動して、こちらをよく見てくれる。行き先を書いた紙などを掲げても「道路を走ってると読めないよ」というドライバーは多い。実は、ヒッチハイクに必須と言われる「行き先を書いた紙」は、ATやPCTなどの超有名ロングトレイル沿線では不要なケースが少なくない。地元民はみんな、ハイカーがどこへ行こうとしているか知っているからだ。無いよりはあったほうがいいけれど。
もっと細かい話をすると、真夏のヒッチハイクには飲み物を用意したほうがいいとか、逆に寒い時期はがっつり防寒が必要(ハイカーは歩いている間は体が温まるので、立っているだけの時よりも薄着で移動している)とか、あんまりにも不潔な服装は印象が良くないから避けるとか、ピックアップトラックやRV車はドライバーがアウトドアに理解がある(ハイカーの生態を知っている)から狙い目だとか、上げていけばキリが無い。また自分には分からないが、女性は男性なら絶対停まってもらえないようなバカでかいトラックをヒッチできたりするらしい。しかし、ロングトレイルに関するガイドブックはほとんどヒッチハイクありきで書かれているが、それでも「女性は一人でヒッチしてはいけない」と但し書きするのが通例である。たとえロングトレイル周辺でも、だ。決して安全が保障された行為ではない。
ヒッチハイクはハイクの本質ではないが、ロングトレイルのハイクとヒッチハイクを切り離すのは難しい。それはもう、ハイク文化の一部と言って良い。もしあなたがアメリカでハイクするなら、ぜひ安全性と法的妥当性を考慮した上でヒッチハイクしていただきたい。


暑い日に路肩に立つのは、飲み物ナシではかなりキツい。