2017年6月10日土曜日

妄想バックパック脳内検討委員会(後編)

前回の続き。中量級以降です。
軽量級だとネット通販が多いが、自分のように長旅を想定すると、そこそこ丈夫でフレーム入り(ある程度の重量を安定して背負える)が当たり前だから、店頭で手に入る大手メーカーの製品になる。実質的にはほとんどオスプレーとグレゴリー二択で、ちょっといろいろ考えてドイター、くらいがアメリカのマーケット事情だろう。

中量級

Deuter ACT Lite 50+10

ここ数年愛用して来たACT Lite。同クラスの他社製品に比べ、横幅が3cmくらい細身で、腕の動きを妨げないのがお気に入り。また実質50リットルのフォルムなので、荷物が小さくスッキリする。サイドのコンプレッションは、上の気室の横にベルト一本(クリップ付き)だけで自分はあまり上手く使えなかったが、気室を平たくして背中に重心を近づけることよりも、上の気室に荷物を集めることでバランスを取っていた。バックパック自体の重量は1730g。

Osprey Volt 60

昨年あたりに背面パネルを変更して、「大きなタロン」に近づいたボルト。オフィシャルのビデオではヒップベルトに変更は無いが、今年(2017年)店頭で確認したら少しシンプルな物に変わっていたように見えた(以前のモデルでは移動できるウエストのパッドがあったが無くなった)のでまだマイナーチェンジするかもしれない。ボトムがガバッと開き、メーカー推奨で23kgまで背負える。

実は、ヘイデュークトレイルを歩くにあたって自分はボルトも検討した。ただ、考えたのはワンサイズ大きな75だ。食料を8日分とか水を8リットルとかが何回も、という条件から、容量の大きいモノを考えた。なんとボルト601780gなのに、15リットルも容量が大きい751840gしかない。

Volt75

今後、2週間補給ナシとかいうハイクをするハメになったら、この75は有力候補だ。



アメリカのアウトドアショップでバックパックを眺めるからには、当然グレゴリーも考えていた。ただ、最初はスタウト(Stout)というモデルを見ていた。スタウトはバルトロの軽量版だろうと考えていたのだが、モデルチェンジして随分スッキリしたデザインになったなあ、と思ったところにパラゴンがリリースされた。

Gregory Paragon 58

えっ、グレゴリーがこんな軽いモノを出したのか!と驚いた。小さなインナーのサック(グレゴリーは「サイドキック」と呼んでいる)とレインカバーも付いて、トルソー短めのS/Mサイズなら1590gということになっている(新しいモデルなので、まだいろんな数字が出てしまっているけどコレがどうやら本当。M/Lだと1620gか)。トップリッドが取り外せるようになっていて、ここはスッキリした新スタウトと大きな違い。
S/Mサイズだと55リットルになるそうなので、ワンサイズ大きなこちらも検討。

Paragon 68

レインカバーとサイドキックを除けば1600gくらいになるようだ。
グレゴリーが(彼らにしては)随分軽量なモデルを出してきたというのは驚きだが、オフィシャルサイトでもそのスペック、特に重量に関する表記がメチャクチャなのが笑える。現在のハイカーが、どれだけネットでスペックをチェックしているかよく分かってないのだなと思う。心配だ(笑)
とにかくヒップベルトはしっかり、大きなアルミフレームで安定してそう。背負い心地を保ったまま軽量化、のモデルに見える。

MountainHardwear Ozonic 65

防水バックパック、というのは時々見かけるが、なかなかメジャーになるものはない。やっぱりみんな、穴が開いたらそれまでというのが引っかかるのだろうか。このオゾニックも昨年くらいからレビューなどを眺めていたのだが、最近安売りでしか見かけなくなった。レインカバーやスタッフサックが不要になるから、方向性としては良いはずなんだけど。


軽重量級

Osprey Atmos65

このクラスになると、前面(背中から遠いほう)がガバッと開いて「中身が見える」バックパックが出てくる。昔はコレが当たり前、のデザインで、慣れた人には捨てがたい機能だろう。オスプレーでは、前面ポケットがもっとスッキリしたAetherというモデル(サイドジッパーで主気室にアクセスできる)も人気だが、重量を比べてみるとこちらの方が軽い。どちらもよくアメリカのロングトレイルで見かけるが、ロングディスタンスでは少数派か。


Gregory Zulu 65

ZuluZシリーズの後継モデル、のはずなのだが、コレとスタウトを見てはっきり分かるのは、グレゴリーもとうとう軽めのモデルで前面ポケットを簡素化したということだ。それでも前面がガバッと開く、を残したのがズールー。つまり重い方から考えると名作バルトロは縦にジッパーで開く前面ポケット付き、ポケットが無くなればズールー 、主気室への前面からのアクセスを無くせばスタウト、トップリッドを取り外せるようにすればパラゴンというラインナップになる。


MYSTERY RANCH STEIN 62

アメリカでもチラホラ店頭に現れてきているミステリーランチ。実は、ミリタリーやハンティングのギアを扱う店では定番。
スタインは取り外してデイバッグになるトップリッドがなんだか不思議な形をしているが、ロングディスタンスで歩いているとバックパックを背負ったまま頭の後ろのジッパーを開けて中身を取り出すハイカーが結構いる。このトップリッドはそれを考慮しているのかなと思う。個人的には、ボトムを左右からコンプレッションする機能が面白い。寝袋や保温ジャケットの類いは、昔に比べて随分小さくまとめられるようになった。重量バランスを考えると「下が小さくなる」機能があってしかるべきなのだが、自分が愛用してきたドイターは下の気室の容量が全く変わらない(隔壁を解放して上下の気室を一つにすることはできる)。グレゴリーやオスプレーは下の気室がまあまあ狭く、隔壁は取り外せるのだが、重量バランスを上にできる訳ではない。そう考えるとミステリーランチのこの機能は面白い取り組み。



中量級と軽重量級は、重量級の名作を簡素化したモデルになりがちだ。自分としては、当分の間は
1、前面はメッシュポケットのみ
2、上と下から内部にアクセス
3、トップリッドは取り外せる
4、フレームあり
5、背中の通気を保つ機能あり

というあたりが現在のトレンドで、しばらく同じような機能のバックパックを各社が出し続けるのではないかと思う。
2013年にPCTを歩いている時、ドイターのエアコンタクトをハック(改造)して、トップリッド無しにして上の口をロールトップにしているハイカーがいた。今回検討した中量級のモデルはみんな紐で口を絞るようになっているから、この辺はまだ変わってくるかもしれない。

妄想の結果、軽重量級のフォルムを保ちつつ上手く軽量化したオスプレーのボルトと、思い切った攻めの軽量化に出たグレゴリーのパラゴンに絞りました。
最終的に、購入したのはパラゴン68。小さくスッキリするのでパラゴン58も魅力的だったけど、S/Mサイズは55リットル相当なのでちょっと小さい。自分はバックパックの外にいろいろ吊るしたりしがちなので、ココでちょっと大きめにして中にバンバン荷物を放り込むスタイルにチャレンジしようかと。昔、GoLite70リットルを使ったことがあるけどそんな感じになるか。そして容量が余ったらトップリッドを無くすことも検討します。

ただし、ココで日本のみなさんにお伝えしなければならないことが……。パラゴン68は、日本では定価36,720円(税込)なのですが、アメリカでは税抜き定価が250ドル。自分は2割引セール(毎シーズン必ずある)で、本体200ドルプラス税の216ドルにて入手しました。そしてボルト60は定価180ドル、75200ドル。2割引なら144ドルと160ドルだから、36,000円出すつもりならパラゴンとボルト両方買えちゃうってことなんです。正直、帰国時に自分へのプレゼントとして買ってしまうかもしれません。

ということで、しばらく使い込んだらパラゴンのレビューを書きます。軽量化して、果たしてハードな使用に耐えるタフさは保たれているのか?という視点から、ヘイデュークトレイルで使ってみるのは最高のテストだと自分では思っています。妄想から現実へ、いざ実践!